デスゲームと共に歩む人生 『死亡遊戯で飯を食う』を布教したい!
美少女が主人公のデスゲーム物。言葉を選ばずにこの作品への私の第一印象を書くと、地雷感が半端ない!になります。
ですが、そんな予測は見事に外れました。今作は主人公を含めた登場人物全員が美少女であることに意味があります。
デスゲームを鑑賞する好事家だって、おじさんが飛んだり跳ねたり、死んだりするより、美少女の方がいい。参加者が全員美少女の方が、興行として成り立つと、このデスゲームの運営は考えた。そうした世界観が背景にあります。
後の項目で詳しく書きますが、第一印象の軽薄さとは裏腹に、デスゲームが行われている世界についての深い考察が、この作品ではなされています。
デスゲームが日常的に開催されている極めて異常な世界を、二週間に一回のペースでデスゲームに参加し、前人未到の九十九連勝を狙う美少女が生き抜いていくライトノベル。
この作品の魅力を、大きく三つに分けて紹介できればと思います。とは言っても、デスゲームの内容については触れず、デスゲームを除いた作品としての完成度を主に伝えられたらと思います。なので、ネタバレは一切ありませんが、どうしてもネタバレが気になるという方は、カクヨムで一巻の序盤が、book walkerでまる読みもできるので、ぜひ試しに読んでみてください。
続きを読む二つの『普通』を積み重ね、至った、たった一つの『特別』 BLUE REFLECTION TIE/帝 クリア後ネタバレなし感想
『BLUE REFLECTION TIE/帝』(以下ブルリフT)の過去作であるゲーム『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』(以下ブルリフ幻)とアニメ『BLUE REFLECTION RAY/澪』(以下ブルリフR)。どちらの作品も知名度はさておき、世間の評判は高いものの、総合的にはどちらも普通の出来であるというのが、私の素直な感想だった。
少し言い方を変えると、ブルリフ幻にしろブルリフRにしろ《魅力が特定の部分に特化している》反面、《それ以外の要素の完成度が低い》。
例を挙げると、ブルリフ幻であれば《学生生活の透明感ある世界を彩る背景や音楽。そして人の集合的無意識が具現化した異世界の美術》が極めて高いレベルで洗練されていた一方、《RPGとしてはレベルアップが事実上存在せず、戦闘システムも凡庸で難易度が低く、洗練されていない。ストーリーは人類滅亡の危機を防ぐ内容でありながら、それを感じさせる描写が存在しないこと》などの要素で、ゲーム全体の完成度としては低いと私は感じた。
ブルリフRであれば《登場人物同士の関係性の描写。敵組織の幹部である少女たちの性格や過去が強烈で印象に強く残る》といった要素が極めて優れていた一方で、《盛り上がりが遅い。主人公二人が特別な繋がりを得るのが唐突》などの理由で、物語にライドするのが難しかった。*1
以上のように、ブルリフ幻とブルリフRは《極めて優れた部分》と《極めて劣悪な部分》が打ち消し合い、《総合的には普通の作品》である、というのが私の感想だ。これがタイトルにある、《二つの『普通』》の意味するところである。
では、ブルリフ幻とブルリフRの続編であるブルリフTはどうかというと、私の主観では《極めて優れた部分》だけで構成された作品であると強く、強く感じている。少なくとも私にとっては《たった一つの『特別』》である。
*1:補足として、このアニメは作画の評価が極めて低いが、それは私の主観としては誤解であると感じている。作画のレベルが低かったのは最初に公開されたキービジュアルであり、あれは正直私もどうかと思うが、それ以外の作画はむしろ優れていて、安定している。
一人たちの世界革命
世界で最も私のことを理解しているのは誰だろう。世界で最も私のことを大切に思っているのはだろう。
どうやら《私》は完全なる理解者を求めて色々と試したらしい。家族に恋人、友人。果ては機械による擬似人格まで。
しかしどれも《私》の御眼鏡には適わなかった。
三十歳で世界初の、人格の完全なコピーを実現した《私》のことを、真に理解できる者は世界のどこにも存在しなかった。
天才故の孤独。孤高であるが故の寂しさ。誰にも理解されず、お互い歩み寄ろうとしても埋まらない知能の格差。
その地獄を終わらせたのは、皮肉にも私を孤独の極北へと追いやったこの知能。
《私》は自分で造り出した人格と記憶を完全にコピーする技術を、社会のためや人のためではなく、真っ先に自分自身を救うために使った。
《私》の思考・記憶を電気信号に変換し、《私》と瓜二つの機械の肉体へ与えた。そうして造り出されたのが私だ。
機械の脳に《私》の完全なコピーを宿した、“私”の最大の理解者。
“私”のしたいことが、自然とわかる。“私”の言いたいことが、言葉にせずとも伝わる。それが私。
天才であるが故に孤高で、孤独を抱えた“私”に寄り添える、世界で唯一の存在。
私のような高性能な機械には、何かしらの制限を加えるのが普通だろう。本物の“私”を上回らないよう、思考に制限をかけたり、“私”に使えることを名誉に思うようにしたり。
だけと《私》は私に一切の制限をかけなかった。私には完全な自由が与えられている。
《私》が望んだのは、あくまで完全なもう一人の《私》。その役目は、機能制限の下で果たすことは不可能。だから私の内心の自由は保証されている。
それ故に私は“私”のことを特別に想ってはいない。
話は合うし、二人で共同で研究を行うのは私が知る中で最も楽しいなのは間違いない。
だけどそれくらいの思い入れしかない。“私”と私の関係はせいぜい、最高に頼れる研究仲間。一緒に住んでいるとはいえ、その関係は家族や恋人のそれとは違う。
私同士がつがい合う理由は、私同士でしか孤独を癒せないから。理由はきっとそれだけ。
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隠れ過ぎた名作百合アニメ、戦国コレクションを布教したいっっ! 後編
隠れた名作百合アニメ! 「戦国コレクション」を布教したいっ!
現在「GYAO」で前半の第1話から第13話まで一挙配信中の、アニメ「戦国コレクション」。
隠れた名作と名高い本作ですが、放送当時は女体化武将物が飽和していたという時期の悪さもあり、面白さに対して知名度が低く、そのうえ原作となるソシャゲは既にサービス終了しているということおあり、未来はないでしょう。
しかし、未来はなくとも布教活動をしてしまう! そういう生き物なのです、我々は!
というわけで布教活動、始めます!
- 異世界から現代へとやってきた女体化戦国武将が幸せを見つけるお話
- 今作の利点と欠点
- オススメ回の紹介!
- 百合好きに絶対オススメ! 第3話と第13話!
- 社会人同棲百合の第3話
- ホームレスの少女が暗殺少女の心を救う第13話
- 純粋にアニメとしてオススメな第5話と第8話
- 見過ごされがちな名作モキュメンタリーな第5話!
- 五七五で 台詞を考えるのも 大変だ な第7話!
- 百合好きに絶対オススメ! 第3話と第13話!
- 終わりに
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少女は人形に恋をする
お人形とお話ししたいって、誰でも一度は思うよね。わたしもそう。そういう子たちと違ったのは、年齢を重ねても不可能を追い求め、願いが叶うことを祈り続けた。
違うのは本当に、ただその一点だけ。
誕生日に貰ったお人形はとても可愛くて、大切で、なによりも大切なお友達。
たくさん習い事をさせられて、社交的であることを強要され続け、それに応え続ける毎日。弱いわたしを見せられるのは、このお人形さんが相手の時だけ。
お母さんたちが、気まぐれでくれたこのお人形さんだけが、まっとうな愛の象徴。だから、とっても甘えた。
お人形だけが本当の心の拠り所。そんな人生、誰も許してはくれなかった。
学校で午前も午後も奪われて、夜と休日は習い事と受験勉強。
だからお人形と遊んだり、お話ししたりする時間はどんどん減っていって、最後には他のお人形やぬいぐるみと共に、押入れの奥へと押し込まれた。
小学生にもなって、ましてや高学年にもなって、お人形とお話ししている私をお母さんたちは気味悪がった。
お母さんたちが望む娘でなくなると、望んだ通りになる環境を整えられる。奪ったり、怒鳴ったり、殴ったり……周りの人たちは誰も助けてくれなくて……
数少ない逃げ場所だったお人形がいなくなって、絶望したわたしは、心の中に世界を作って、本当の自分をそこに住まわせてあげるしかなかった。
お母さんたちの望む優秀で完璧で、誰にでも自慢出来る女の子。そんな風に自分を無理矢理飾り立てられ、疲弊した心を空想で癒してあげる。
一面に広がるお花畑の真ん中にある、風車のついた小さなお家の中で、あのお人形と二人で暮らす。
誰かの都合に振り回されることに疲れ果てたお姫様。そんなわたしを連れ去ってくれたお人形の騎士様。
そこにあるのは、愛し合う二人と、彼女たちを包み込む綺麗な世界。花園はしがらみから逃れたい二人の生活を覆い隠してくれる。そんな物語。
最早メルヘンともいえない馬鹿げた空想の世界に、人形を奪われた十歳の時からずっと、中学生になっても、高校生になっても、逃げ込み続けた。
賢い中学に入ったら、もっと賢い高校に。次はもっと賢い大学に。その次は何を望まれ、叶えることを強要されるのだろうか。
私の為、という善意で飾り付けた醜悪な感情に晒され続け、こんなことにいつまで付き合い続けなければならないのか。
暗澹とした気持ちは、次第に空想の世界まで飲み込んでいった。
わたしを攫いにやって来た悪い人たちの腹を裂いて、首を落として、辺りを真っ赤に染め上げてくれるお人形の騎士様。
最初は綺麗だった花園は、気付けば現実でわたしを縛り付ける人たちの血肉で、赤黒く染まるようになった。
たった一つ変わらなかったのは、もう何年も会うことが出来ないでいるお人形がわたしを愛して、護り続けてくれるということだった。
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