神薙羅滅の百合SS置き場

百合しか書かないし、百合しか書けない! 陰鬱な百合がメインのブログになります

ゲーマーにこそ進めたい CRYSTAR クライスタ という埋もれそうな名作

 このゲームはいわゆる大作ゲームではない。かといって特定のコアゲーマーを狙い撃ちにするようなインディーズゲームというわけでもない。

 美少女がパッケージで、公式サイトのキャラ紹介も女の子だらけという、アクションRPGというよりオタク向けの美少女動物園を作ろうとした印象を受ける。あげくに作品コンセプトが、女の子が涙を流して強くなるという……ちょっと気持ち悪い感じ。

 まぁ私みたいな、自分の手で殺めてしまった妹のために頑張るお姉ちゃんのアクションRPG! というプロットだけで購入が決定する百合好きとって、上記は問題ないかもしれないが、普通の人はそうもいかないだろう。

 どうしても徹底的に作り込またオープンワールドや、有名作の続編といった大作ゲームに心が奪われてしまう。そしてそれらは実際に面白く完成度が高い。

 楽しむためにゲームをするのだから、これは正しい選択だ。実際私も普段はそういった基準でゲームを選び、良ゲーや神ゲーを引き当てている。だからわざわざこんな辺境にひっそり佇むゲームにまで食指を伸ばす必要もなければ、増大していく一作あたりに費やすプレイ時間のせいでそこまで余裕のある人も少ないだろう。

 だが私が本当にやりたいことは面白い作品に触れるということだ。ゲーマーの大半はそうだと思う。ならば、CRYSTARを見落としてしまうのは、単純に勿体無いことだと思う。

 洋ゲーの実写顔負けのグラフィックはないし、モーションもPS4基準では滑らかではないし、二次元美少女というゲーマー向けには思えない本作だが実際にプレイすると、上記の欠点を払拭するだけの製作者の情熱と作品への愛がこれでもかと詰まっている。

 そのおかげで、欠点に思える箇所は上手くカバーされ、刺さる人にはとことん刺さる、かなり尖った要素を持ちつつも、幅広い層に受ける作品に仕上がっている。

 

 CRYSTARは複数のジャンルが内包されている。雰囲気ゲー、アクションRPG(以下ARPG)、ノベルゲームの三要素だ。これらを一つ一つ、公式サイトでわかる範囲を逸脱せず、そこで伝わりきらない部分はネタバレなしで紹介していきたい。

 

 

 雰囲気ゲーとしてのCRYSTAR

  死後の世界で、辺獄と呼ばれる空間が舞台の本作。死後の世界の表現で一般的なのは、幻想的な世界、おどろおどろしい世界、現実とあまり変わらない世界の3つだろうか。その中でCRYSTARは幻想的な世界に大きく振りかぶっている作品になる。

 リウイチさんによるキャラの立ち絵は、美少女系でありながら、絵画のようなタッチで描かれており、辺獄の幻想的な雰囲気に上手く溶け込んでいる。特にキャラクターの魔法少女的な意味での変身後の衣装のデザインや書き込みは、命を削りながら書き上げたとしか思えないほどで、ただの立ち絵とは思えないほど美しく、差分も多い。更にモブキャラに至るまで全て、立ち絵はリウイチさんの手で書かれているため、世界観から浮いているキャラは1人もおらず、異世界を鮮やかに彩っている。

 辺獄には8種のステージが用意されており、その全てに個別の曲と背景が与えられている。どの曲もステージの空気感が伝わってくる名曲揃いで、どの曲もワンループするのに2分は当たり前という大ボリュームで、BGMが繰り返されている印象は全くない。

 

 削除さんによる曲のジャンルはゲーム全体を通して幅広く、クラシックもあればテクノもあり、大げさかもしれないが全ての音楽のジャンルがあると言っても過言ではない。人の怨嗟の声や、涙を流す嗚咽が入った曲まであるのだ。

 雰囲気ゲーにおいて重要なステージの背景も全て特徴づけられており、ステージを進む度に全く違う世界へと旅立てる。ゲーム全体に共通する意匠が随所に配置され統一感は残しつつ、既視感を生じさせない職人技が炸裂している。

 ステージを見れば音楽を、音楽を聴けばステージをなんなく思い出せる、印象に強く残る世界が構築されている。

 私は特に1.3.4面の曲が好みで、5面の背景は凄まじいまでの迫力がある。

 惜しむらくは世界観を彩るザコ敵に、特定のステージ限定の者が存在せず、いわゆる色違いで強化されたザコの使い回しが目立つことだろうか。しかしステージごとに存在するボスに使い回しは殆どなく、世界の広がりを感じるには十分だろう。

 そして使い回しの目立つザコ敵であるが、そこはモンスター図鑑のフレーバーテキストを用いることで、飽きさせない工夫をしている。たとえ色が違うだけだとしても、攻撃ボイスや、やられボイスは全員違うので、手抜き感は薄い。モンスター図鑑の内容は多岐にわたり、世界観説明や、複数のフレーバーテキストをまたいで進行するサスペンスめいたもの。笑えるものや、怖いのもある。確かにザコ敵の見た目こそ使い回しで手抜き感をぬぐい切れてはいない部分もあるが、豊富なボイスと図鑑のテキストにより、ちゃんとただの色違いでは終わらない個性が与えられている。

 長々と書いたが、少なくとも公式サイトやPVの雰囲気を気に入ったのなら、その期待を確実に超えるだけのクオリティーは最後まで保証されている。プレイしているうちに、世界が先細りしていく感覚はなく、満足しているからこそ出る、最後に迎えた時のこれで終わりか……という寂しい感情が溢れて止まらなかった。

 

 ARPGとしてのCRYSTAR 

 

 オブラートに包まず言うと、CRYSTARのプレイ映像が公開されるたびに、アクションが苦手な人でも楽しめるという地雷ゲーぽい発言や、キャラのモーションがあんまりカッコよくは見えず、プレイ動画の段階で爽快感もあまりなさそうでアクションゲームとしては正直ダメそうだな、とプレイ前は思った。だが実際にプレイしてみると、その印象は全く的外れで、かなり完成度が高かった。

 プレイした印象としてはアクションが苦手な人でも楽しめるARPGというよりは、アクションゲームが好きな人でも楽しめるARPGと形容する方が相応しいように思う。

 3Dバトルアクションゲームをかなり雑に区分するなら、ド派手な技や滑らかな動きを楽しむ爽快アクションと、堅実な立ち回りを要求してくる静かなアクションの二つが主流だろう。CRYSTARはこの2つのちょうど中間辺りのアクションゲーム。より正確に表現するなら、両方の性質を有しているとも言える。

 具体的に言うと、必殺技のエフェクトとモーションがカッコよく、掛け声もあってビジュアルは派手な部類だ。それでいて集団戦では、適当に技を振っているだけだと、横槍を入れられるので、敵グループに合わせた立ち回りも考慮した方が鮮やかに闘えるという、堅実派アクションの要素も持ち合わせているからだ。そしてこの二つの要素を高いレベルで融合させている。

 だからと言って敷居が高すぎることはなく、アクションが苦手なら難易度を下げてもいいし、レベルや装備を整えれば、敵の攻撃で吹き飛ばされこそするが、ダメージをかなり軽減出来るのでゴリ押しプレイも可能になるので、アクションゲームが無理な人でも進められる。

 アクションに自信があって、自分のプライドをかけたシビアなバトルをしたいなら、これらのどちらか、あるいは両方を縛っても面白い。

 難易度だけ見ても、初心者と上級者のどちらも楽しめる余地が残されている、つまり解法がいくつか用意されているのだ。アクションRPGの利点を上手く生かした作りだと思う。

 

 とはいえアクションゲームで大事なのは、やはりキャラを動かしていて楽しいかだと思う。PVや公式のプレイ動画を見る限りダメそうだと思ったのだが、実際は違う。キャラのモーションは文字で書くほど酷くは勿論ないのだが、まぁよく見るとちょっとカクカクしている。それを上手いこと爽快な斬撃や魔法系のヒットエフェクトと合わせることで、見栄えが良くなるよう工夫されている。

 そこにキャラが技ごとにいくつか用意された豊富な掛け声が合わさることで、地味な見た目からは想像出来ない、爽快感が産まれている。

 さらに打ち上げ技を当ててからの、通常技や持続の長い必殺技を合わせたコンボ開発は、格ゲーを少し嗜む私にはちょっと面白く、頑張れば魅せコンボを作れそうなポテンシャルを感じなくもない。

 特に小衣というキャラは打ち上げから、少しシビアな入力を要求される通常技を組み合わせたバスケがあり、打ち上がるならボス相手ですら何もさせずにテレッテー出来たりする。

 

 そして素晴らしいのは、4人いるプレイアブルキャラは通常技の性能も含めて全く性能が違い、ちゃんと使い分けたくなるようになっている。強制的に使い分けさせられるのではなく、使い分けたくなるというのがミソで「この武器の攻撃しか効きません!」とか「この属性しか効きません!」などの要素は全くない。

 打ち上げやすい敵には打ち上げが得意なキャラで戦ってもいいし、別に打ち上げず射撃メインのキャラで戦ってもいい。どっちでも勝てるからだ。だがそれは一対一の時の話で、集団戦ともなると、打ち上げやすい敵、射撃メインの敵、魔法が効きやすい敵etc……なとが群れで出てくる。こうなると効率よく各個撃破していかないと厳しい戦いを強いられ、必然相性のいいキャラへ素早く切り替えつつ戦うのが華麗だ。キャラ変更もワンボタンでサクッと変更でき、さらに変更前のキャラの状態や、チェンジする相手によって、キャラ変え時のセリフが変わるという熱い要素があり、仲間同士の友情や絆をうまくシステム上で表せている。

 だがあえて意固地になってこのキャラだけで勝つ! という推しキャラゴリ押しプレイも許容されるほどのキャラ性能をそれぞれ持ち合わせているため、戦略を練るとかカメラを操作して敵の動きを把握するなどすれば勝てる懐の深さがある。

 キャラチェンジをシステムで強制するのではなく、敵の群れの性質でキャラチェンジをさせたい状況に追い込む。だがそれを強要はしないで済むようにそれぞれのキャラを強くする。ここまでアクションゲームにおける、攻略法を強制するストレスに気を配れているアクションゲームはそう多くない。八割くらいの敵は全ての武器で倒せるが、残りの二割は決まった手順があります、というのが普通で、全編通してこのバランスを保ちつつ、ある程度の緊張感を持たせているのは白眉なレベルデザインだと思う。

 

 まとめると、ジャンプがあり、打ち上げコンボがあり、キャラ毎の個性と成長したら覚える必殺技の個性を両立させ、そのどれかの使用を強要するのではなく、使いこなさせたくさせる、王道のアクションゲームとしての完成度はほとんど理想的と言ってもいい。

 とはいえ中立的な視点で敢えて書くなら、ボスの使う追尾弾の性能が高く、弾の方向へ回避しても消滅せず、ゴリ押さざるを得ない場面もあったし、強いキャラや強い技、逆に弱キャラや弱い技もある。だがキャラ格差に関しては全キャラ独自の強みはあり、いわゆる弱キャラと強キャラがいるゲームではなく、強キャラと狂キャラしかいないゲームなので、ちゃんと好きなキャラで最後までクリア可能になっている。

 賛否が分かれそうな点としては、倒れ込んだ敵は完全無敵である。ただこの状態になるのは、吹き飛ばし技を当てた後か、打ち上げた敵が地面に落ちた時だけであり、敵を隙だらけにした後のリスクとして上手く機能していると個人的には思う。

 アクションに関する悪い部分も、ストレス要素にはならず、工夫の余地があるの範疇で収まっていると私は考えている。

 

 

ノベルゲーとしてのCRYSTAR

 次にノベルゲーとしての話。

 最初にノベルゲーとして見たときのシステムの話をしたいのだが、純粋なノベルゲーではない作品でたまにあるのが、バックログが見られないというものだ。そして残念ながら今作にはバックログがない。更に何度も見たくなる会話劇が作中で繰り広げられるにも関わらず、イベントの回想もない。

 とはいえノベルゲーとして見たときの欠点はこれくらいであり、むしろノベルゲーとして優れている点もある。具体的には2つだ。

 1つ目は、選択肢を選ぶときに、丸連打をしていても選択肢が選ばれないようになっている。スティックか十字キーを押して初めて、選択肢にカーソルが合わさる。是非とも世界共通のシステムになって欲しい。

 2つ目はスキップ機能というか早送り機能だ。イベントを丸ごと飛ばすスキップ機能はないが、早送り機能が素晴らしい出来だ。ムービーでキャラが歩くだけの部分は早送り出来ない作品もあるが、今作ではそういったシーンでもちゃんと早くなる。

 テキストが素晴らしく、仮に周回プレイするとしても、何度でも読みたくなるCRYSTARではお世話になることはほとんどないシステムだが、ちゃんと気配りが出来ているなと感じられる部分だ。

 ノベルゲーのシステムをメタ的に活用している場面もあり、選んだ選択肢が運命に捻じ曲げられるプロローグのシーンは、ありがちといえばありがちだが、製作者の悪辣さが出ていて、個人的に好きなシーンの1つだ。

 

 上記のシステム部分がどこまで気になるかは人それぞれだろう。私は特に気にならなかったが、嫌な人は嫌だとはおもう。

 とはいえシステム周りがバグ塗れでなければ、そこに多少の不便があってもシナリオが良ければ、良作にまで挽回出来る。

 今作のシナリオにある要素全てが刺さった私には、過去現在未来の何者にも侵されない、神ゲーだった。普通神ゲーという表現における神は多神教だと思うが、今回に限り一神教的表現だと思って欲しい。それくらい私には特別で、唯一無二の存在になった。

 だがこの評価は尖った、好みが分かれかねないシナリオや設定であるのと表裏一体でもある。公式サイトを見て合わないと思ったら、最後まで合わない可能性もある。だがそれだけで見逃すには惜しい作品だと個人的に思う。

 というのもCRYSTARはその尖った部分だけを押し付けてくる、癖の強いだけ作品ではない。テキストは読みやすく、暗いシーン、明るいシーン、カッコいいシーン、面白いシーンとバリエーションに富んでいる。

 アクションパートにおけるキャラの特徴がハッキリとしているのと同様に、シナリオ上においても捨てキャラや魅力的でないキャラは1人としていない。永遠に忘れられないくらい好きになれる人物と、無限に殺しても殺したりない人物、どちらもいる。

 立ち絵はどのキャラも特徴的で美しく、完全フルボイスという素晴らしい仕様であり、没入感は凄まじい。

 本作のプロデューサーは、生放送などでダークな作品だと頻繁に自称してはいるが、それだけで終わる作品ではなく、何度も泣かされ何度も笑顔になれた素晴らしい作品だ。

 女の子の涙がコンセプトという、癖の強さで避けてしまうには惜しい、上質なシナリオが本作にはある。

 

 

作り込みという視点からのCRYSTAR

 ここまで上げた、雰囲気ゲー、アクションRPG、ノベルゲーの三要素の質がそれぞれかなりの水準なのは間違い無いと思う。しかしこれらの要素が上手く纏まらず、魔改造されてしまえば台無しだ。

 だが本作においてそれは杞憂だ。前述した卓越した空気感で作品世界へとのめりこませ、アクションRPGという媒体の特徴である、キャラを自分で動かし育成するという表現が、感情移入を後押しし、ノベルゲーとして生きてくる。

 仮にだが、どうしても気に入らない要素がこれらの中にあれば、雰囲気は見なければ済むし、アクションは難易度を下げたり、敵を無視して進んだりも出来るし、テキストのスキップ機能も充実している。

 こう書くとさも飛ばしたくなる要素です! という風に取られかねないが、そうではなく、どの要素もちゃんと作り込んであるのに、それらを押し付けようとはせず、ちゃんとその取捨選択権をプレイヤーに委ねているのが凄いと伝えたいのだ。

 どうしても力を入れて作ったのだから全てプレイヤーに遊びつくして欲しくなるのが、作者心だと思うが、それを製作者のエゴだとあっさり捨てて、ユーザーフレンドリーを最優先する姿勢は製作者の鑑だとしか言いようがない。

 最もその姿勢が顕著に見られるのが、本作における鑑定前の装備アイテムでもあり、世界観の構築において重要な要素である、敵の断末魔の文字がキャラの脳内に取り憑き、画面を侵食するという要素だ。

 この演出は画面の可視性において致命的たりえる物だが、ステージにいる時は取得時の演出だけに抑えてある。しかし一度拠点である自宅に帰ると、画面に断末魔が漂い、図鑑を読むことさえ困難になる。解決法は簡単で、断末魔を鑑定すれば全て取れてなくなる。

 ゲームプレイに支障は全くないが、キャラの味わう苦痛はちゃんとプレイヤーにも伝わるように、と考え抜いたのだろう。そのおかげで利便性と演出の両立という離れ業をこともなげにやってのけている。

 まぁ、私が発売前に危惧していた通りに、アクションパートでもバンバン画面を横切る案をプロデューサーは推していたらしいが、それは流石に止められたという、お茶目なエピソードがあるにはある。

 とはいえ最終的には、こうした表現を取るか、利便性を取るかのせめぎ合いは、雰囲気ゲーでもあり、アクションゲームでもある本作ではかなりあったと思われるが、そのどこを探しても、不便を押し付けられることは一度としてない物へと仕上がっている。

 製作者からプレイヤーへの気遣いに溢れ、スタッフによる作品愛にも恵まれたであろう本作には、表現か利便性のどちらかを捨てるなどという安直な妥協は一切なく、キッチリ全ての細かい部分までそれらが両立されている。ここまでされると神ゲーになるのは偶然ではなく必然のことだ。

 あとこの作品において不足しているのはただ一つ、知名度だけだ。

 完成度も高く、売れる必然性が詰まっている作品なのに、それにたるだけの売り上げには届いていないと私は思う。

 売り上げだけが全てではないのかもしれないが、ここまでの作品を作り上げてくれた製作者には、売上というわかりやすい形で報われて欲しいと私は思うし、それに何よりCRYSTARの世界にもっと浸っていたい私は、本作が売れて、世間に受け、続編や関連グッズが出て欲しいと願っている。

 この長文を読んでCRYSTARを手に取ってくれる人が1人でもいれば嬉しい限りだ。

 

 

百合ゲーとしてのCRYSTAR 

 と以上で感想の体裁は整ったと思うので、あとがき的なノリでCRYSTARの最後で最大の、私を虜にした百合ゲーとしての要素について話そうと思う。

 まず百合には男性は必要か否かという、最早タブーと化した問いがある。

 まぁこれは単に個人の趣味のお話だと思うから、どちらが優れているとかは無いと思う。好みがあるだけだ。それで私はというと、百合には男性がいない作品の方が好みだ。男性という対立軸を持たせずとも、キャラが魅力的であれば、2人の関係を素直に応援出来る。自分が好きな相手へ素直に好きと伝えて、結ばれるのは一つの理想だと思う。

 荒れてしまいそうな話題なので、もう一度念押ししておくと、私は男性の出てくる百合作品はダメだと言いたいのではなく、単にそっちの方が好みというだけの話だ。

  CRYSTARは、男性のいない世界での百合だ。

 お姉ちゃんが妹の為に頑張り、それを支える仲間も女の子で、敵も女の子。一部のモブに男性がごく少数存在するが、公式サイトのキャラ紹介に1人もいないことから明らかなように、単なるステージの中ボス程度の役割しかない。

 主人公たちに協力したりして、仲良く会話を交えたり、アドバイスする人物は存在しない。徹底してCRYSTARは女の子同士に拘っている。

 パーティメンバーは女の子だけだが、司令官は男性という作品は数多い。それは私の理想の百合ではないし、というかこれはいわゆるハーレム物だ。

 CRYSTARに男性司令官的な者がいたと仮定したら、私はこの作品を宙に放り投げていたかもしれない。

 こんなことを書くのはどうかと自分でも思うのだが、私はかなり拗らせた百合厨で、ほんの些細な男女の描写を目にするだけで、露骨に機嫌が悪くなってしまうという困った病気を発症している。

 もちろん大好きでたまらない男性キャラはたくさん存在している。それこそ今作の喋る守護霊の中の人が演じた、吸血鬼なんかは好きな男性キャラだ。

 本題に戻そう。本作において、この症状が出た場面は一度としてなかった。それどころか、こんな病的な人間が望んだ百合ではなく、心の底に埋もれて隠れていた本当に望んでいた百合を提供してくれCRYSTARへ、どう感謝を伝えればいいのか私には分からない。

 初期案では主人公たちの守護霊が戦う内容が、主人公たち自身が戦う形になったらしい。

 キャラを切り替えた時に、その時の体力に応じて相手の名前の呼び方が変化したりする。

 素晴らし過ぎる。どれだけの間、女の子だけを操作して、女の子だけの世界で、女の子同士が友情や愛情を育むアクションゲームを夢見たからわからない。それを満たしただけでも高評価なのに、前述の通り、ゲームとしてのクオリティーまでべらぼうに高いのだ。

 百合だと思ったらそうじゃなかった時のショックは大きい。なんの権威もない私ではなんの説得力もないかもしれないが、CRYSTARにおいてそれはないと私が保証する。

 確かに不安要素として小衣というキャラは、紹介文に夫の文字が書いてある。だがCRYSTARは購入前にある不安を全て、杞憂で終わらせてくれる作品だ。

 ここ以外にも不安な要素があったり、期待出来そうだけど不安な部分もあるかもしれない。

 だがそれがゲーム部分であれ、百合に関するものであれ、おそらく杞憂で終わる……それどころか期待を大きく超えてくれるポテンシャルを秘めている。

 商業ルートに乗ったゲームでこんな体験が出来るとはCRYSTARに出逢うまでは思っても見なかった。同じスタッフで、2度目の体験を出来れば最高だし、CRYSTARの後日談も欲しくてたまらない。

 一作でちゃんと完結している作品にいうのも変だが、CRYSTARの完全版やシナリオの入ったDLCが出たら喜び過ぎて大暴れすること必至だ。こうした完成し尽くされ、ユーザーを充分以上に満足させた作品なら、完全版もDLCも大歓迎だ。

 

 さて、散々書き殴ったことだし、そろそろ終わりにしよう。最後にわがままを言わせて欲しいのだが、CRYSTARがガチャのあるソシャゲになったり、ガチャでコラボするのは出来れば避けてほしい。なぜなら私のサイフに底が空くだろうし、預金通帳が零になることが半ば約束されているからだ!