隠れた名作百合アニメ! 「戦国コレクション」を布教したいっ!
現在「GYAO」で前半の第1話から第13話まで一挙配信中の、アニメ「戦国コレクション」。
隠れた名作と名高い本作ですが、放送当時は女体化武将物が飽和していたという時期の悪さもあり、面白さに対して知名度が低く、そのうえ原作となるソシャゲは既にサービス終了しているということおあり、未来はないでしょう。
しかし、未来はなくとも布教活動をしてしまう! そういう生き物なのです、我々は!
というわけで布教活動、始めます!
異世界から現代へとやってきた女体化戦国武将が幸せを見つけるお話
前述の通り、本作は女体化戦国武将を題材としたソーシャルゲーム「戦国コレクション」を原作とするアニメです。しかし原作未プレイでも問題ない……というか、私自身原作をプレイしたことがないので、未プレイでも安心して見れます。
事実上の「アニメオリジナル作品」だと思っていただいて良いと思います。原作要素があるとすればキャラデザくらいではないでしょうか。
しかしソシャゲ原作と聞くと不安になる方も多いかと思います。ですが戦コレに限り、そういったことはありません!
なぜなら、ソシャゲ原作でありがちな「キャラが多すぎるせいで一人一人の描写が浅くなりやすい」という問題を、1話完結のオムニバス形式(毎回主人公が変わる)で回避しているからです。
さらに主人公毎に作風もガラッと変化するため、どのお話もそれぞれ違った魅力を見せてくれるという離れ業まで見せてくれます。
しかし毎回雰囲気が違うからといって、全体として世界観が散らかっているとか、テーマに統一性がない、ということはありません。
戦国コレクションの一貫したテーマを決めるのは難しいですが、おそらく根底にあるのは「それぞれの幸せ」
毎週、違った戦国武将が主人公の座に据えられ、彼女たちは人々と関わることで、成長し、それぞれの幸せの形を見つけていきます。
しかし注目すべきは戦国武将だけではありません。脇を固める現代の人々も魅力的です。
一癖も二癖もある戦国武将と関わることで、現代に生きる人たちも成長していくのです。
そうした要素が1話、24分にきっきり詰め込まれています。
今作の利点と欠点
基本的には一話完結のオムニバス形式なので、どこからでも気軽に見れるというのは大きな利点でしょう。
しかしその一方で、一話完結のオムニバス形式としての完成度が高すぎるせいで、シリーズ全体の空気感が掴み辛いというのが欠点でもあります。
前述の通り、「それぞれの幸せ」がテーマであることは確かなのですが、初見でそんなことがわかるはずありません。
そしてオムニバス形式にはどうしても付き纏う、回毎の当たり外れや、好き嫌いが出ることは否定できません。
誰か一人のキャラクターに感情移入したいという人にも、オムニバス形式は大きなマイナスになる要素だと思います。
特に、掴みとなる第1話が、戦コレの空気感に馴染んでいない初見時には、退屈で凡庸なボーイミーツガールにしか見えず、脱落するのは誰もが通る道でしょう。(本当は百合要素たっぷりなのに……)
実際私も、リアタイで見ていた時、一話を見てつまらないと感じ、切りかけました。
しかしたまたま第4話を見た時、これはすごいアニメだなと確信し、録画していた第1話~第3話を見直し、完全に心を掴まれました。
それからは毎週、オープニングの映像を見て、次の武将と話の内容を予想したりと、心待ちにするように。
そうして全26話を見終わった時、大きな喪失感に襲われ、思い出に残る一作になりました。
というわけで、ぜひ1話から見ていただきたいところですが、せっかくのオムニバス形式なのですから、現在配信中の範囲でオススメの回を紹介し、まずはそれらから見ていただければ良いかと思います!
オススメ回の紹介!
百合好きに絶対オススメ! 第3話と第13話!
社会人同棲百合の第3話
第3話はファッションモデルとして活躍している上杉謙信と、彼女を支える直江兼続の同棲生活と仲直りを描きます。
兼続が謙信とキスできる機会を逃したことを後悔したり、添い寝をしたりと、初っ端から濃厚な二人の世界を見せつけられます。
しかしそれだけで終わらないのが戦コレ! 兼続が抱える謙信への劇重感情が終始描写され、不穏な空気を纏ったまま、クライマックスを迎えていきます。
兼続は天下統一を目指す謙信の役に立つことだけが生きがいでした。しかし現代世界では誰も天下統一など目指しておらず、謙信はモデルとして平和な日々を送ることを愛し始め、兼続は自分の存在意義を見失っていきます。
兼続の視界は謙信に捨てられる不安のあまり色はなく、謙信に自分を見て欲しくて、競馬中継を見るなり「競走馬で騎馬隊を作れば天下統一ができます!」などと提案したりと、現代での生活にあまり馴染めていません。
そうして二人は徐々にすれ違っていく……そんなお話です。
ホームレスの少女が暗殺少女の心を救う第13話
大きく飛んで第13話も非常に百合成分の強いお話です。
小悪魔王・織田信長がホームレスの少女・アゲハと出会い、絆を深めていきます。
そんな二人に迫る暗殺者・杉谷善住坊の影……彼女の狙いは信長の暗殺。
果たして三人の運命は……!? などと煽りつつ、お話の内容は戦コレ屈指のほのぼの回です。
信長とアゲハのハプニングキスという百合的な見所はありますが、一番の見所は善住坊が信長とアゲハの関係にヤキモチを焼く場面でしょう。
戦コレの主役は戦国武将ですし、第13話の主人公は善住坊に設定されていますが、このお話の中心は間違いなくアゲハという、明るさだけが取り柄の少女です。
アゲハはホームレスという境遇ではありますが、その生活を心の底から楽しんでおり、悲惨さはどこにもありません。
そんなアゲハは偶然、善住坊と出会い、二人は路上生活を始めます。
二人の生活が描かれるのは一分程度と非常に短いですが、その短時間に暗殺者として過酷な運命を背負った善住坊が、アゲハに心惹かれていく心情が丁寧に描かれています。
戦国世界からやってきた善住坊は、勝手のわからない現代世界でのサバイバル法をアゲハに教わりながら、暗殺者時代には想像もできなかった温かい日々に依存していく。
そうしてアゲハが自分にとってあまりにも大きな存在になり始め、このままでは暗殺者として生きられなくなると善住坊は考え、彼女の元を去り、信長暗殺へと向かいます。
そうして非常な決断を下した善住坊が目にしたのは、暗殺対象の信長とイチャイチャするアゲハの姿……
続きは見ましょう! 善住坊は意外とポンコツ、とだけ伝えておけば、最低限バッドエンドでないことは伝わるでしょう。
純粋にアニメとしてオススメな第5話と第8話
見過ごされがちな名作モキュメンタリーな第5話!
5話の主役は塚原卜伝が主人公……と見せかけて、現代へとやってきた戦国武将が常に帯刀していることへの危険性を描いた、モキュメンタリー作品です。
卜伝は剣の腕を頼りに、道場を開くことで生活費を稼いでいます。そんな彼女の下に訪れたのは、戦国武将帯刀問題の取材を行なっているチームの面々。
卜伝は快く取材に応じますが、取材が進むにつれて徐々に、彼女の奥に秘められた戦国武将としての狂気が露わになっていく……
その取材の様子がテレビで放送されるや否や、世間は戦国武将の帯刀反対一色に。
というのが前半部分のあらすじです。しかしそこは戦コレ。後半から雰囲気がガラリと変わります。
実は先ほどの取材は悪意のある編集が行われていたことが発覚し、実際の卜伝は非常に心優しい性格であることが明かされます(まぁ、余程感が鈍くない限りは「この番組は怪しいな」と最初から気付ける作りになっていますが……)
そんなこんなで卜伝は、戦国武将を陥れた取材チームにお灸を据えることを決意。彼女は自身と共に現代へと転送されてきた弟子たちを集めて、反撃に出ます。
五七五で 台詞を考えるのも 大変だ な第7話!
松尾芭蕉が海沿いにあるボロカフェに訪れ、そこに集まる人々の心を前向きにしていくお話。
特筆すべきは芭蕉の台詞ほほぼ全てが五七五のリズムになっていることでしょう。台詞作りから俳人であることを印象付ける彼女ですが、焦るとリズムが崩れてしまいます。身も蓋もない言い方をすれば、かわいいです……負けました……
そんな芭蕉に影響されて、カフェに集まる人々も俳句を読み始め、その過程で自身の内面と向き合い、諦めた夢をもう一度追いかける。
戦コレ全体のテーマであると思われる、「それぞれの幸せ」を綺麗な語調と、美しい背景で描く、後味の良い物語です。
ぜひ見てね オススメなのです 本当に
終わりに
全てのお話がそれぞれ違った魅力を持っているので、このままでは全話の解説を書くことになりそうなので、この辺りで泣く泣くストップ!
上記の4話を見たあとは、伊達政宗による伝説のスタイリッシュ⭐︎成敗! が光る第4話や、戦コレ屈指のカオス回、豊臣秀吉が「不思議の国のアリス」的な世界に迷い込む第8話もオススメです。
百合小説ブログらしく、第11話が百合的に美味しいということを強調しておきながら、締めにさせていただきます。