神薙羅滅の百合SS置き場

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4つの涙が紡いだみらい 第二章

 私とナナミのふたりは無敵だった。初めてのゲームでも楽々こなせてしまうナナミに腹が立つこともあるけど、まだまだ私の方が経験値では上だから対等な関係でいられる。

「この先、上の3体お願いね。下の4体は私が処理するから」

「わかったヨ! どんとまかせてー!」

 こうしてプレイ中にアドバイスしながら、協力プレイでスコアボードに名を連ねるのが最近の楽しみだ。

「こいつがラスボスで、今までのボスの攻撃パターンをランダムで繰り出してくるから頑張って。少しの失敗はカバーするから」

「ナナミは失敗しないヨ! それより有理の方こそしっかりしてネ!」

「言ってくれるじゃない。経験の差を見せてあげる!」

 画面に現れたのは幽鬼の私よりも醜い姿をした合成獣。初心者を抱えながらだと厄介な相手だけど、私とナナミの敵ではない。ふたりで弱点を苛烈に攻め立て、敵の攻撃は事前動作を潰し、発射された弾は迎撃する。私たちはリロードのタイミングまで息ぴったりだから、私が1つ被弾しただけで、ラスボスさえもあっさり撃破した。

「やっぱり有理の方が被弾したネ!」

「それはナナミに向かう攻撃を防いでたら、自分の分が疎かになったからでしょ!」

「辺獄では仲間を庇って自分が怪我しても人のせいには出来ないんだヨ。 だからこれは有利のダメージなノ!」

「ふふっ。ナナミってたまに子供みたいで、負けず嫌いよね」

「有理までそんなこと言うの! さすがのナナミもこれにはぷんぷんだヨ!」

「はいはい。ナナミは大人で偉いね」

「すっごくトゲのある言い方だよねー」

 いつものようにナナミをからかいながら、いつものように店内スコアランキングの頂点に名前を刻み込む。YURI & 777と。

 

 

「これから有理はどうするの?」

 今日の主目的を終えて店を出た私たち。ナナミと約束していたのはここまで。この質問をするのは当たり前だろう。

 私としてはせっかくここまできたのと、ナナミともう少し遊んでいたいから、何か引き止める理由を探す。時計を見ると時刻は12時を指す直前だった。いい理由を見つけたと、心中で歓喜の声を上げる。

「せっかくだからこの辺りでご飯でも食べていかない?でもナナミが帰るならそれで……」

「そんな寂しいこと言わないで! ナナミももう少し有理と遊んでたいし、そうしよー!」

「ありがとう。だったらこの通りにお店がたくさんあるから、いい場所でも探しましょうか」

「そうだねー。ナニかえんじょいでえきさいてぃんぐなお店を探しに、れっつごー!」

 そういってナナミは歩き始める。ナナミといると安心する。私の身近な人たちはヨミガエリの影響でところどころちぐはぐで、零には別の私が酷いことを言ってしまったあとだから、早く会って謝りたいけれど、それさえも気不味い……あとどうしても一緒にいるみらいさんが怖い。かといって千ちゃんや小衣さんはほんの少しだけど苦手な部分がある。うん、やっぱりナナミが一番だ。

「有理行かないの?」

「ごめんごめん。今行くから」

 ヨミガエリしてすぐの私には、気持ちの折り合いがつかないことが多くて、それを忘れさせてくれるナナミは私の大事な友達だ。

 

 

「悪いなあー。休日に突然呼び出してもうて。ヨミガエリの影響で妊娠してからの期間が、実際と合わんみたいなんよ」

「気にしないでちょうだい。支えてくれる夫がいないのも、ワタシのせいなのだから、このくらいの手伝いはさせてちょうだい。というより、もっとこき使って欲しいくらいなのよ」」

 想真さんが何度目かもわからん、鉄板になった自虐ネタを披露する。ウチとしては、一番大事な子供は帰ってきたから、水に流せてまではおらんけど、以前のように想真さんを憎悪してたりはせえへんから、ほどほどにしてほしいのが本音。とはいえ、あんまり開き直られても癪やから、これくらいがいいんかもしれへん。

「そうはいっても、あの人がちゃんとサポートしてくれたかは怪しいところやけどね」

 記憶の中にいる生前の南羽と幽鬼になった後の南羽。どちらも子供に消極的やったから、生きてたとしても誰かの手を借りることにはなってと思う。せやから、経験豊富な想真さんを頼れるのは素直に心強いと思ってる。

「殺したワタシがこんなこと言うのもどうかと思うけれど、そんなにあの人のことを悪く言わないであげて。辺獄に連れ込まれておかしくなってしまっただけで、なんだかんだで手伝ってくれたと思うわ」

「どうかなぁ。南羽は殺されるほどではなかったけど、ヨミガエリさせるほどやったとは今でも思わんし……でも、そのことを真剣に考えても辛くなるだけやから、南羽の話はあんましたないな。特に想真さんとはな」

「……そうね、ごめんなさい。無神経だったわ」

「ええよええよ。気にせんといて」

 身近に頼れる人のいないウチは、どうしてもちょっとした手伝いを想真さんに頼んでしまう。その度にこうして気不味い雰囲気になるのは、どうにかならんかと色々工夫してはみたものの、お互い抱えてるものがデカ過ぎて、なかなかうまく割り切れへんまま、ずるずると関係が続いている。ええ加減この感情をどうにかせなな、と思いつつ……

 想真さんが料理を黙々と作ってくれる音だけが響くだけの、重たい静けさが辺りを包む。

「そうえば今日は千ちゃんどっか行ってたりするん?」

 その空気に耐えかねたウチは、暗くなりようもない話題を振る。

「零さんとラーメンを食べに行くと言っていたわ」

「千ちゃんと零ちゃんかー。相変わらず仲ええなー」

「ええ。零さんと出会ってから千は明るくなって母親として嬉しいわ」

 零ちゃん、千ちゃん、777の3人は、辺獄で会うことがなくなった今でも仲がいいみたいや。小衣姉さんはお腹に子供がおるから昔みたいに3人とは会えんくなって、少し寂しい気持ちもある。今会われへん分、子供が産まれたら遊びに来て貰おうかな。

「千が零さんのお話をするとき、すごく楽しそうな顔をするから、ついつい勘ぐってしまうくらいなのだけど……」

「なにそれちょーみたい! 今度千ちゃんに会ったら試してみよ!」

「ワタシが言ったってことは黙っておいてね。千に怒られるから」

「わかったわかった。小衣姉さんは口硬いからなー」

 こうしてなんでもない話をしてる時のウチらを見ていたら、なんのわだかまりもないように見えるかな。やっぱりその方が気楽やな。

「ご飯できたわよー」

「ウチそこまで子供やないよ」

「ワタシからしたらまだまだ子供よ。それと冷蔵庫にほとんど食材がなかったから、後で買いに行ってくるわね」

「それやったらウチもついて行くよ。たまには体動かしたいし、全部任せきるのもイヤやからな」

「わかったわ。でもあんまり無理しないでね」

 午後の予定も決まって、充実した休日になりそうやな。そんなことを考えながら、想真さんが作ってくれた料理を食べ始める。それにしても相変わらず、なんか安心する味がしてるなぁ。

 

 

 休日の繁華街をなめていた。この辺りにある話題のお店や、スマホで出てくる場所は長蛇の列が出来ていた。じっとしていられない性分のナナミはもとより、非合理的なことが嫌いな私も、長時間並んでまで人気店へ足を運びたいとは思わず、混雑こそしているが並ぶ必要のなかった手頃なチェーン店で昼食を取ることにした。

「なんかありきたりなトコロになったネ」

 ナナミが残念そうな顔をしながら、そして重い口調でそんなことをいう。その気持ちもわからないではない。私もどうせならここにしかないような特別感のあるお店が良かった。でも昔は友達と……主に零が引きこもりだからという理由もあって、外で遊ぶことに積極的ではなかったから、このお店でも私には充分特別な経験だ。

「まぁでも、ナナミと一緒ならどこでも楽しいし、私はこれはこれでいいかな」

 珍しく気落ちしているナナミをちょっと励ますつもりで、少し笑顔をまぜて声をかける。するとナナミが表情をパアッと明るくさせる。別に特別なことをしたつもりのない私は、ナナミの唐突な感情の変化にあっけにとられてしまう。

「それならよかったよー。有理がナナミのことキライになったかと思って、ちょっとコワかったんだよネ!」

「……? ナナミは今日、何も悪いことしてないんだから、嫌いになりようもないんだけど」

「ならイイんだけど……昔からワタシ、普通にしてたらみんなにキラわれてたから……こうやって、しくしくナナミになっちゃう時があるんだヨ!」

 努めて明るく振舞おうとするナナミに胸がつまる。こうやってナナミはたまにだけど、危うい一面を覗かせることがある。零の時もそうだったけど、こうやって弱いところを見せる相手に私は弱い。ナナミのような年下相手だと特に、お姉さんとして守ってあげなきゃ! なんて妹が出来た気持ちになってしまう。。

 でもナナミが抱えるソレはふつうじゃないから、軽い気持ちで手を出すのはためらわれた。ほんの僅かに彼女の記憶を垣間見ただけでしかないけど、それは異様な記憶だった。

 ナナミの周囲全てが彼女の一切を認識しなくなり、追い詰められたナナミは首を吊ってしまう。

 あまりの出来事にやり場のない怒りを覚える。こんなに賢く、可愛くて、優しい女の子をそこまでして除け者にするのは理に反している。

 だから私は、気軽に手を出してはいけない部分を、背負う覚悟を既に決めているから、ナナミを支えることをためらったりしない。

「零たちはナナミがナナミらしくしてても除け者になんてしないでしょ? 私も一緒。だからそんな顔しないで」

「……ありがとう有理! もういつものゲンキなナナミだから、シンパイいらないんだヨ!」

「元気になってよかった。それでナナミは何を食べるの?」

「うーんと……コレとポテトにしようかナ!」

「ポテト……ね……」

 外でフライドポテトを見るたびに思い出す。零がいくつものLサイズのポテトを注文して、美味しそうに平らげたおぞましいあの光景を。

「有理、気分悪そうだヨ? ダイジョウブ?」

「大丈夫。ちょっと零のポテトへの異常な執着を思い出しちゃっただけ」

「大好きなポテトを食べる零、考えるだけでえきさいてぃんぐだねー」

「はぁ。どんなのを想像してるか知らないけど、あの小柄な体では考えられない量のポテトを食べてる姿は軽くホラーよ」

「そんなオソロシイの! なんか、あんまり見たくなくなってきたかモ……」

 零に並々ならぬ好意を抱き、神格化している節まであるナナミに、あんな姿の零を見せるわけにはいかない。そうは思いつつ、そんな零を目の当たりにしたナナミを見てみたい気もする。

「そうえば最近私と遊ぶことが増えたけど、零となんかあった?」

「今でも零とはナカヨシだヨ。千と交互に遊んでる感じかナ?」

「なんでそこで疑問形になるのよ……」

「ルールがあるわけじゃないからネ。たまたまそうなってるんだヨ。ぐーぜんだねー」

「そんなもんなのね」

 納得したような相槌を打ちつつ、そのことを聞いてナナミの友達として思うところがある。千ちゃんと零……二週間くらい前に会った時の零を見つめる千ちゃんの瞳は、恋する乙女のそれだった。

 ナナミは零のことが好きだと公言してはばからないし、零もそれを受け入れている。でもそれは姉妹とか、従姉妹に近い関係としてだと思う。でもナナミの気持ちがもし自覚の薄い恋愛感情なのだとしたら、傷つく結果になりかねない。

「前から気になってたんだけど、ナナミは零のことをどう思ってるの?」

 それとなく零へ抱く感情を聞き出そうとしてみる。何より大事なのはナナミの気持ちだろうから、それを知る前に私が何か助言したりするのは迷惑だろう。

「すっごく大好きな友達だヨ! 違うナナミが結婚の約束までしてくれてるから、今からわくわくするよネ! 結婚式には有理も呼ぶから、絶対きてネ!」

「……う、うん。楽しみにしてるね」

 す、すごい答えが返ってきた。ナナミに遠回りな聴き方をした私のも問題があるとは思うけど、一番恐ろしいのは、これと同じことを零の前でも言ってるんだろうと確信できてしまうこと。

 友達の恋愛相談にのって、お節介を焼く自分に酔いそうだったけど、目が覚めた。ナナミはそんな人間じゃない。千ちゃんが零と付き合っていると知ったら、なんかよくわからない勢で、気付いたらナナミと千ちゃんの二人が零と付き合ってる結果になると思う。

「お待たせしました」

 色々と話したり考えている間に、料理が運ばれきた。なんか自分でもよくわからなくなってきたので、ご飯でも食べながら落ち着こう。そもそも恋愛なんて非合理的なものに、首をつっこむのは私の主義に反する。

 

 

「みらいと材料を買いに、家の近くのスーパーに行くことになったんですが、それで大丈夫ですか?」

 みらいとの電話を終えた私は、千さんに自作ラーメン作りをどうするかについて、決定事項を伝える。

「ああ。それで構わないよ」

 そう答える千さんの表情に影が落ちる。やっぱりみらいと過ごすことにはまだ抵抗があるのかもしれない。それも当然のことだと思う。真理念が見せた記憶を含めれば二度も母親を殺害されているのだ。それも遊び半分で。そんな相手と仲良くするのが難しいのはわかっている。

「やっぱりみらいと買い物に行くのはやめておきましょうか」

「えっ! いやその必要はない。みらいさんとのことで気を使ってくれているんだろうが、心配いらないよ。母さんはちゃんと生きて帰ってきたんだ。確かに殺された他の乗客にした凄惨な仕打ちを許した訳じゃない。だからちゃんと償いはして欲しいと思っているよ」

 そこまで言って千さんは言葉に詰まる。みらいへ向ける感情は、私以上に複雑なはずだ。あの悲惨な出来事を、正義を重んじる千さんが見過ごせすのはすごく難しいと思う。私だってそうだから。みらいをヨミガエリさせていいのか凄く悩んだ。

 でもそんな私の背中を一番強く押してくれたのは、千さんだった。許せない気持ちは強かっただろう。でも小衣さんがアナムネシスのヨミガエリを受け入れたように、千さんもみらいさんのヨミガエリを受け入れてくれた。

 こう見えて千さんは、自分の正義と矛盾した行為であっても、その人にとって大事なことなら受け入れてくれるし、背中も押してくれる。そんな千さんがいてくれたから、みらいと久遠の三人姉妹そろっての生活があるんだ。

「それさえしてくれれば、みらいさんを除け者にしたいとは思わないよ。小衣さんと母さんを見てるとそう思うんだ」

「小衣さんと想真さんですか」

「ああ。この時期になると小衣さんひとりだと、日常のことに困ることが増えたから、母さんが助けに行ってるみたいなんだ。妊娠中のことも色々相談に乗ってあげてるらしい。それが母さんなりの償いなんだ。子供だけはヨミガエリさせられたとはいえ、夫と子供を殺めてしまった母さんなりの」

 小衣さんと想真さん……気がかりだったふたりの仲は悪くないみたい。よかった。心からそう思う。

「それと零は気づいていると思うが、今のみらいさんはとても苦しんでる。それが自分の罪の向き合うってことなんだと思う。それを今はまだちゃんとは出来ていないかもしれないが、ちゃんと向き合う一歩を踏み出しているんだと思うよ。だからあたしからそんなみらいさんを拒絶したりはしないよ」

「千さん……」

 千さんの言葉に救われた感じがする。許した訳でも、完全に受け入れた訳でもないんだと思う。それでも今のみらいの在り方を肯定してくれたことが、私は嬉しかった。最愛の妹が、災厄を撒き散らす幽鬼の姫としてではなく、みらいとしての人生を歩み始めているのだと思えたから。

 と、そこまで考えて今度は千さんのことが気になる。

「みらいのことじゃないなら、どうしてさっきは、あんなに暗い顔をしていたんですか?」

「えっ! そんな顔をしていたのか?」

「ええ。今まで見たことがないくらいでしたよ」

 暗い雰囲気を和ませようと、言葉にからかいの色を混ぜてみる。なんとなくだけど今は小衣さんみたいに振る舞っても、大丈夫だと思ったから。

「どうしてあんな表情してたのか教えて欲しいです」

「ふぇ! えっと……それは、その……せっかくの零とのデートだから……最後までふたりっきりが……」

「零姉さん、千さん。少しいい?」

 私が千さんをからかっていると、背後から久遠の声がした。

「久遠! どうしたのこんなところで」

 突然の出来事に状況を飲み込めていない私とは逆に、さっきまであたふたしていた千さんは、いつもの冷静でカッコいい表情に戻っていて既に全てを理解しているみたいだった。

「なるほどな。さっきのやたらと都合よく鳴った着信音はそういうことか」

「事後報告になってしまってごめんなさい。みらいと私で、ふたりの会話を全て聞いていた。本当にごめんなさい」

「別に私は構わないよ。ある程度予想していたことだし。それより、今日のあたしは相当に見苦しところもあっただろうから、みらいさんは大分荒れてたんじゃないか」

「ええ、とても。見ていてヒヤヒヤしたわ」

「あとで会った時にみらいさんに怒られないか心配だな」

 ふたりが交えた言葉を聞いて、私はようやく状況を理解した。

「……あー、そういうことですか。ということは、久遠は何か用事があってきたんだよね?」

「それは……」

 私と久遠が過ごした時間はとても短い。でもその時間はとても濃密だったから、久遠のことは過ごした時間以上にはわかってると思う。久遠が話そうと決意したことを、言い渋るのはきっとよっぽどのことなんだと思う。久遠がそれほど思い悩むことと言ったら、思い当たるものは1つしかなかった。

「もしかしてみらいのこと?」

「はい……今日のみらいを見ていて、零姉さんには私が思ったことを伝えておきたくて」

「それならあたしは席を外していようか?」

「出来れば千さんにも聞いていてほしい。でも、私と千さんではみらいへの考え方が違うから、不愉快な思いをさせてしまうかもしれないけれど……」

「そんな心配はしなくていいよ。久遠さんがみらいさんのことを心配してるのは理解してるつもりだし、あたしもあそこまで思い詰めて欲しいわけじゃないんだ……」

 そこまでを言葉にして、千さんは一度息を吸う。そして絞り出すようにこう続けた。

「でもあたしはみらいさんに手を貸すべきでないと思ってる。ちゃんと自分で自分なりの償い方を見つけて欲しいんだ。そう考えていて、それを曲げるつもりがないことだけは理解していて欲しい」

「わかった。私も千さんになにかを強制するつもりではないの。ただ零姉さんに寄り添うだけだった私には、荷が重かったからそれを下ろしたいだけ」

 そう久遠が前置きしてから話してくれた内容は、私の思いもよらないことばかりだった。